父の残した傘

人ってアリみたいだな。一人ひとりの力は弱く、他愛もないことで息絶えていく。しかし総体として色々なことを成し遂げる。そしてその総体は間違いなく一人ひとりから成っている。一人ひとりが無くては総体は存在しない。目に見えるものは総体であり、一人ひとりの影響力がどこにどう及ぼしてそうなるのか判然としない。それでもなお、一人ひとりが無くては総体が無いのは自明である。それにしても一人ひとりの弱いこと。一人ひとりに及ぼす人生の波風のむごいこと、無慈悲なこと、理不尽なこと。それでもその総体の成し遂げた膨大な歴史の上に立って今自分は幸せを享受している。自らもその一人であることの認識をするとき、虚しさと希望の狭間をひたすら生き抜くこと、次世代も恐らくそうであろうことが頭をよぎる。そして皆ができる限り幸せな時間を過ごせるよう祈る。祈る。

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