「Book」カテゴリーアーカイブ

死を生きた人々

訪問診療医と355人の患者  小堀鷗一郎

広く読まれて欲しい。特に自分と同じく医師免許を持っている者で、この本を今読まないで良い人はいないのではないか、と思う程の書物。類稀な名著であることは紹介を受けた方より自明であったが、これほど感情を揺さぶられるものとは想定していなかった。何年も無意識レベルで引っかかっていた疑念が、優れた知性の言葉によって解きほぐされることは幸せそのものである。今、この時点でこの本に巡り会えたことを大変感謝している。

★★★★★

p.1 70年ほど前の1951年には、自宅で最期を迎える人が大部分で、病院・診療所における死亡は約1割にすぎなかった(11.7%)。

p.23 先に述べた「家政学講義」が世に出た1906年頃、国民の医療はすべて在宅医療であったから、在宅医療という概念も、したがって名称も存在しなかった。表題から明らかなように、この本は明治国家が期待した良妻賢母を養成するための婦女子を対象とした教科書で、看取りそのものが女性の役割であった。

p.35 こういう状況下ですら、周囲のどこを探しても、「いつまでも生きている気の顔ばかり」で”死の気配”など全く感じられません。

p.55 私は直ちに自宅退院を予測したが、本人が病棟担当医に口内炎を訴えたところ、口の中に指を入れて軟膏を塗布してくれたことに感激し、もうしばらく病院にいてもよいとのことになった。

p.58 厚生労働省が2025年問題(認知症患者が700万人に達する見込み)を視野に入れて2015年1月に公表した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では、(略)

p.60 2002年から2011年までの10年間に取り扱われた犯罪死体、変死体を除く死体(上述のように大部分が戸外で発見される)数の年間平均は全国で13万5408体である。

p.63 導き出された結論は「これは現時点での社会通念からは必然的結果である」に尽きる。

p.67 この提案は母となる娘に即座に却下された。

p.70 医師が弁護士と並んで我が子に推奨する職業の一つとなったのはいつ頃からのことなのか不明であるが、少なくとも江戸時代には、医師は”深川の遊民”として日々すごしていたことが想像される。

p.74 「時に癒やし、しばしば苦痛を和らげ、常に慰める」という言葉は、フランスの外科医アンブロワーズ・パレ(1510-90)のものとして知られている。

p.79 当時の彼はあまりにも若すぎて、記憶は悪い思い出を消し去って、いい思い出だけをより美しく飾りたてるものであり、その詐術のおかげで人は過去に耐えることができるのだということが分かっていなかった。

p.82 その理由は明快で、国民の大多数は在宅で最期を迎えることを望んでいないからである。「望んでいない」を正確に表現すれば「考えたことがない」、さらに突き詰めるならば「自分が死ぬとは思っていない」のである。

p.85 医療技術の発達と病院利用者の増大により、医療・看護関係者の間では「死は敗北」といった意識が生まれ、「延命至上主義」の風潮が広まった。

p.86 日本人が「死ぬこと」を考えなくなったこの100年間に、もう一つ考えなくなったことがある。それは「老人らしく老いること」である。

p.97 通常の握手では手を話してもらえず、無理に振り放そうとすると噛み付いて歯の力で引き留めようとする患者がいるからである。

p.98 「ご主人はどんな人ですか」

p.118 なお、在宅看取りを行う医師の間には「患者の死亡時刻から遡って24時間以内に診察が行われない場合には医師は診断書を書くことができない」という誤解が長い間存在していた。

p.124 一言で表せば、日本は「生かす医療」はトップクラスであるが、「死なせる医療」は大きく立ち遅れているということになる。

p.130 したがって在宅療養支援を行うとすれば「診療所」ではなくマンパワーが期待できる「病院」の方が現実的である。

p.147 グラフ上で二つの曲線が交叉するのは約40年前の1975年頃であるから、”病院で死ぬという文化”は約半世紀にわたって徐々に醸成されてきたことになる。

p.151 入院死は敗北であり、在宅死こそが正しいという「在宅神話」に、今度は患者も家族も縛られる状況である。

p.172 政府は15日(2015年6月)、2025年時点の病院ベッド(病床)を115万〜119万床と、現在よりも16万〜20万床減らす目標を示した。

p.174 その理由は、「望ましい死」の可否は患者の急変に際して救急車を要請するかどうかで決まることが多いからである。

p.175 救急車を要請するかどうかの決定は、患者を日頃診察し、病態だけでなく、患者・患者家族の希望を熟知している医師が行う必要がある。

p.178 2025年問題への最も効果的な対応策は、かかりつけ医、すなわちホームドクターを持つことに尽きる。

p.185 右にあげた「悲惨」は、「生かす医療」が世界第2位、「死なせる医療」が20位以下に低迷する国にしか存在しない種類の「悲惨」、物質的には豊かであるにもかかわらず、死を忌むべき敗北とみなすことから起きる悲惨と言える。

p.191 いずれにせよ、ガワンデの、医療者も患者も、いかに死を迎えるべきかをともに初心者として考え抜くべきであろうという考えは、私達に勇気を与えてくれる。

p.192 ただ死にゆく患者が何を最後の拠り所にしているのかを知り、それを共に求める努力をするだけである。

p.198 それは私の見果てぬ夢でもある。

いま君に伝えたいお金の話


ひょんなことより面白い後輩に株のことを聞いたらば、中高生のお子さんに株の勉強をさせて、実際に投資をしているとのこと。

imakimi.jp -子どもの投資教育・実体験プロジェクト-(村上世彰のお金の教育・村上財団)
https://imakimi.jp/

少し驚いたが、村上世彰さんは堀江貴文さんの事件のときに耳にしたことがあり、お金の教育は自分も受けてこなかったという思いもあり、3連休の最後の数時間を使って読んでみた。

正直なところ、何か目が覚めるようなことは無かったが、それは自分が社会に出て30年間色々見聞きして知ったことであり、子供が読んだらどう思うのか少し聞いてみたいとも思った。

★★★☆☆

p.64 実践編 食事代当てゲーム

p.71 作家の村上龍さんが書いた「13歳のハローワーク」という本で、まえがきにはこんなふうにあります。

p.115 少し難しくなるからここでは詳しく書かないけど、7年間、自分のミッションとファンドマネージャーとしての成功で苦しんだことや、ファンドマネージャーをやめた理由は、「生涯投資家」(文藝春秋)という僕の本に書きました。君がもう少し大きくなったらぜひ読んでもらいたい。

p.137 〈番外編〉期待値を上げるためのレッスン〈じゃんけんゲーム〉〈31ゲーム〉〈七並べ〉

日本人の知らない環境問題

特に環境問題に興味があったわけでもなかった。本の題名を見れば固い内容が推測される。

ただ好感の持てるブロガーの友人の著書ということで何気なくポチっといったところ、これが大当たりであった。日本全体を覆うの閉塞感は何とかならないのか、勉強に明け暮れる小学生を見ながら次世代に必要な教育を本当に施しているのだろうかと考えるとき、、、そんな全く関係なさそうなテーマに本書はどんどん絡んでいった。

本丸の環境問題についてはここ名古屋でCOP10なるものが開かれ、当時その意義についてググってみたものの今一つ合点が行かなかったが、この本を読んで非常に良く分かった。

出だしは面白いものの、半分ぐらいまでは環境問題についての歴史と概要が淡々と書かれている。力を抜いて取り敢えず読み進めると、本の真ん中辺りからドンドン面白くなっていく。国連が政治の場としてまたそこで働く著者の実体験として生々しく描写され、最後には魅力的な日本人の紹介と素晴らしいあとがきが待っている。

環境庁勤務後、国連関連機関で働き現職。しかし大賀さんはその固い肩書とは対照的なおおらかな文章の中で、時間的、空間的に遠く大きな視点で物事を捉えているのが分かる。かと言って理想を机上で語るのではなく現実主義者として現場に赴き働き続けている。私は書物を通じて著者の人柄に惹かれたのかも知れない。

★★★★★

p.116 「国連とはコミュニケーションとネゴシエーションとロビーイングの塊だ」先般、とある大学で話をしたとき、一人の女子学生が私の仕事の中身をまとめてこう言ったが、かなり的を射た言い方だと思う。厳正粛々と執り行われる重々しいフォーマルと、ルールも形式もないインフォーマルが巧みに組み合わされて使い分けられる空間を、それぞれの思惑を抱えた世界中の国の代表者が入り乱れる。このなかで事務局は言われたことを淡々と執行するだけのウラカタに徹しながら、交渉の実質的な誘導にも走る。

p.117 美辞麗句の会議ばかり開いていて、国際社会の支援を本当に必要としている人達は置き去りにされているのでは、とよく言われる。しかし、武力を伴わずに国際合意を取り付けるには、会議はいまの国際社会が使えるたった一つの方法だ。そして、いいか悪いかを別として、会議を開くのが国連の仕事なのだ。

p.135 ー 日本人ひとりでケニア北部へ
「マダム、ほんとに行ってきたの?ひょぇーっ、タフだね!」(ケニア人のツアー・ドライバー)
「本当に行ったんですか、一人で?懲罰ものですね」(日本大使館の人)
私がナイロビからトゥルカナ湖畔を経て、八日間かけてケニアの北部地域を一回りしてきたことを伝えたとき、言われた言葉だ。

p.152 ー ケニアのマザー・テレサ
ここで、政府や国連の枠組みを離れ、開発のためにユニークな取り組みをしている個性豊かな二人の日本人を紹介したい。
菊本照子さんは、ナイロビ郊外の孤児院「希望の家(マトマイニ・チルドレンズ・ホーム)」の院長だ。

p.159 菊本さんは、ケニアの子どもたちは目がキラキラかがやいていてかわいい、といった言い方はけっしてしない。そのかわりこういう。「自分の可能性を伸ばすチャンスをつかみたい、そのためには、こわかろうがなんだろうが外に出ていく。それは人間が本来持っているものであり、そのような人間の本質的なものが、ケニアの子どもたちの場合、目に見えるようにはっきりと表れているだけだ」と。

p.161 ー 100万人の父
佐藤芳之さんは、ケニア有数の食品加工会社「ケニア・ナッツ」をつくった人だ。

p.163 ただし佐藤さんは、無理をしてがまんし怒りをこらえているわけではない。何があってもへこたれない、という根性物語とも異なる。肩肘を張らずに機が熟するのを待つ。チャンスが来たら確実にそれをつかむ。問題が次々と起こるからこそ、それを解決しながら進んでいくのがやりがいだ。

p.167 しかし、一般にケニア人は、差し出されたものは喜んで受け入れるだろうが、それは、ありがたい施しをおしいただいて受け取るという受動的なものではないと思う。むしろそれは、自分が生きるうえで役に立つものをつかみ取っていくという能動的な態度だ。まだ取れると思えば感謝するどころかもっと求めるだろうし、求めても与えられないとわかったら、なんとかして奪おうと考えるかもしれない。そのような事態に直面したら、はたして私たちは、小さな優しさだけで太刀打ちできるのだろうか。
この意味で、「ケニアが好きだから」という漠然とした愛着と、困っている人たちを助けたいというささやかな正義感だけでは、ケニアの大地に根を下ろして何十年も暮らすことはできないと思う。

p.169 ただ、ケニアとかかわって23年になる私はこう思う。そんな日本人のうちわずかでもいいから、心の隅に押し込めてきた好奇心に素直になって、もうちょっと元気を出してみるのも悪くないかもしれない、と考える人がでてくればいい、と。

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マラソンは毎日走っても完走できない

マラソンは毎日走っても完走できない
―「ゆっくり」「速く」「長く」で目指す42.195キロ (角川SSC新書)

小出 義雄


こんな本を読む時が来るとは。出会いに感謝。良い本だった。肥満で走ることさえままならない状態からフルマラソンまでの道筋がコンパクトに面白く具体的にまとめられている。著者はQちゃんことオリンピックで金メダルをとった高橋尚子さんを育てた名物監督の小出さん。そういえばオリンピック直前に出版された本のあとがきが優勝したオリンピックのレース展開と酷似していて驚愕したのを良く覚えている。教えるのが上手な人は文章構成能力も高いのかなと思った次第。以下備忘録。

p.14 ひとつは、特に太っている人やランニングビギナーに向けた「体の準備」について。

p.18 ウォーキングメニュー

p.28 1週間に1日は「脚つくり」をする
出来れば1週間で3日は練習日がほしい
土曜日 20分ウォーミングアップ、全力1キロ、5分ジョギング、全力1キロ(、クールダウン)
日曜日 90分ジョギング
月曜日 20分ジョギング
水or木曜日 20分ジョギング

p.35 きつい練習をした翌日は、足を完全に休めるよりも軽めの練習をしたほうが疲労もほどよく取れて、脚つくりも進んでいくのです。

p.40 人間の体は、どんなに鍛えた筋肉も、1週間も使わなかったら2分の1まで衰えてしまう。心肺機能も刺激を与えなければ、2週間でなにもやっていないのと同じ状態になってしまう。トップアスリートだって、1ヶ月も運動をしなければ「ただの人」です。
 練習は続けなければ意味がありません。続けるためには頑張り過ぎないこと。その意識がないと長くは続きません。

p.48 姿勢の良いフォームを心がけるポイントは、頭のてっぺんが真上に引っ張られているイメージを持つこと。

p.49 おへそを前に出すように意識して走ってみると、脚が自然と前にでて、ふっと体が進みます。

p.78 目線は3メートル先へ

p.83 脈拍で練習量を調整する。「138ー(年齢÷2)=目標心拍数(ジョギングのペース)」
POLARハートレートモニターの説明書より
              20才   40才
最大心拍数(HRmax)       200     180
高強度(80-90%)       160-180   144-162  最大運動能力を高めます
中強度(70-80%)       140-160   126-144  有酸素運動能力を高めます

p.86 練習日誌をつける

p.99 インターバル走を使った練習で、もっとも短時間で効果的に負荷をかけられる方法が、坂道インターバル走です。
坂の下がスタート地点。まずは、上りを「全力」で走る。そして坂を上りきったらUターンして「ジョギング」で下りてくる。これで1せっと。坂を下りきってスタート地点に戻ったら、休むことなくまた「全力」で上っていく・・・。
この上り下りを、自分の走力に合わせて繰返します。正直言って、かなりきつい。100メートルの坂なら10本、200メートル以上の坂なら5〜10本程度。それくらいが、効果的に筋肉を鍛える本数の目安でしょう。

p.110 練習スケジュールを組む(具体的な長期スケジュールが記載されている)

★★★★★

フェルマーの最終定理

フェルマーの最終定理

p.323 「大事なのは、どれだけ考え抜けるかです。考えをはっきりさせようと紙に書く人もいますが、それは必ずしも必要ではありません。とくに、袋小路に入り込んでしまったり、未解決の問題にぶつかったりしたときには、定石になったような考え方は何の役にも立たないのです。新しいアイディアにたどりつくためには、長時間とてつもない集中力で問題に向かわなければならない。その問題以外のことを考えてはいけない。ただそれだけを考えるのです。それから集中を解く。すると、ふっとリラックスした瞬間が訪れます。そのとき潜在意識が働いて、新しい洞察が得られるのです」

こんな本が820円で読めるなんて。忙しいときに限ってこういうのに はまってしまうが今回も一気に読んでしまった、買ったまま大切に読むタイミングを待っていた甲斐があった。物理、数学など自然科学に少しでも興味のある人々、そして「人」そのものに興味を持てる全ての人が楽しめると思う。350年もの間、人類の英知を跳ね返し続けた、フェルマーの最終定理がドラマチックに証明されたのが自分の生きている間だったことは何かしら幸運だったと思える。

カラマーゾフはいつになるかな。多分、しばらくは無いな。この本の余韻で当分気持ちの良い日々を過ごせる気がする。

★★★★★

鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ

鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ

  • p. 16 4つの条件
    • 企画やプロジェクトに関連する全ての事実、予測、条件を簡潔に述べていること。
    • 相手の同意を取り付けるために、効果的で説得力のある言葉で書かれていること。
    • 読み手に具体的な行動を提案していること。
    • これらのすべてが一枚の紙にまとめられていること。
  • P.30 情報を蓄積する
    • 企画の目的を念頭に置いて、情報の在庫確認をする。
    • 企画書のテーマについて確実に分かっていること、知らないことの2つのリストをこの順に作る。
  • p.35 誰に読ませるのか?
    • 企画書の内容やトーンが変わる。その人の関心事・思考様式・行動パターン・経歴に合わせ反応を予測して書く。
    • 企画書の読み手はナンセンスな提案を見抜く鋭いレーダーを備えていると考えて行動している。
  • p.43 質問に先回りする
    • プロジェクトの骨組みは?
    • 計画実施には誰が責任持つのか?
    • コストは?
    • どのような利益が見込めるのか?
    • いまなぜ、そのプロジェクトを提案するのか?
    • 企画のどこがユニークなのか?
    • あなたにはどのような経験があるのか?
  • p.50 8つの要素
    • 順にタイトル、サブタイトル、目的、サブ目的、理由、予算、現状、要望
    • Title, Subtitle, Target, Secondary targets, Rationale, Financial, Status, Action
  • p.54 それぞれのパートを解剖する(理解する)
  • p.60 整理
    • ファイル(紙ベース)或いはフォルダ(コンピュータ)を8つ用意し、集めた資料の全てをそこに分類する
    • 明らかに要らない情報のみを捨て、整理する
    • 優先順位をつける
    • ポイントをワンセンテンスずつにまとめていく、「目的」のファイルから実行
      • リサーチの結果はすべて、いずれかのセンテンスに反映されているか
      • それぞれの記述は、リサーチを通じて得た結論や認識を正確に表現できているか
    • パラグラフにセンテンスをまとめていく
    • 頭を冷やす
      • この企画で自分はなにを成し遂げようとしているのか
      • 言いたいことは全部おさえたか
      • それは明瞭にいえているか
      • 欠けているものはないか
      • 論理に飛躍はないか
      • 根拠を示せていない主張はないか
      • 数字はちゃんとつじつまがあっているか
      • そしていちばん重要な点。企画そのものに十分な説得力があるか
    • 企画書の構成を考えてから実際に執筆するまでの間に、少し間隔を開ける。
  • p.70 企画書の執筆
    • 理由
      • 舞台の設定
        • 読み手の興味をひきつけること
        • あなたがどういう人物で、あなたがどういう知識をもっているのかを読者に伝えること
        • あなたが企画書を書いた動機をかいつまんで伝えること
      • 根拠の提示
      • 売り込み
      • タイミングとスケジュール
  • 刈り込み、見本、体裁についての記載が続く

★★★★★ 読んで良かった。2度目にまとめた。学校教育でも取り上げて良いかと。タイミングの良い人にはうってつけの本になるかと。

言葉と宗教

今、ラボで一緒に働いている日本人は移植外科医と免疫学者だが、話していてとても面白い。金曜日4時からはHappy hourというビールを飲みながら研究室の脇のキッチンエリアでダラダラだべるのが、うちのラボのお決まりである。今日は周りで談笑 している非日本人に悪いなと思いつつ、その2人と日本語での会話にのめりこんでしまった。2人とも日本史、世界史、近代史まで良く知っており、宗教や言語学にまで造詣がある。

宗教を語るに、立花隆の「猿学の現在」を引き合いに出してみた。人にしか無いと思われる多くのものが既に猿の世界に存在することがこの本で分かる。芸術と同じく、猿には宗教は無いのではないか?という質問を投げてみた。これに対し、H氏は宗教が必要になる心因的な要因は猿にも既に存在するのではないかということを死んだ子供の面倒を見る猿の親を例にして出していた。そうかも知れないなと思った。それに対し、形式化したものでないと宗教とは言えないのでは無いか?とO氏。それもそうだなと。それでは文章に書いて伝えることなどが必要なのではないか、と私が言うと、それは違う、巫女などは一子相伝のような形で 書物が無い状態でも宗教を形式化したとH氏。それでは言葉は必要なのではないかと言うと、それはそうかも知れないと。これに皆反論は無かった。

ここでウンベルトエーコの「薔薇の名前」のキャッチフレーズがピンと来た。これには感動した。勘違いかも知れないが、自己満足には十分な納得であった。この本・映画は「ヨハネによる福音書」の引用から始まる。 「はじめに言葉があった。言葉は神とともにあった。言葉は神であった。」 なるほどそうなのかなあと。この言葉は妙に気になっていただけに、少し嬉しかった。原作も機会があったら読んでみたい。

In the beginning was the Word and the Word was with God, and the Word was God.

中傷と陰謀 アメリカ大統領選狂騒史

中傷と陰謀 アメリカ大統領選狂騒史

p.97 極端な主張というものはわかりやすいうえ、複雑な要素を捨象するのてストレートに伝わり、かつ正論であるように思われる。そして、それをいう人間を正直で尊敬すべき人間に思わせる効果がある。

p.112 現実が変化するスピードは加速度的に速くなり、あらゆるものが日々めぐるましく変わっている。民意もしかりだ。もはや自分の主義主張を後生大事に守っている時ではない。現実を動かすためには、現実に合わせて自分が変わらなければならない。それは好きとか嫌いとかの問題でも、正しいとか間違っているとかの問題でもない。本当に現実を変える気があるのかどうかという問題だ。だからこそ、ジョンソンのような古いタイプの政治家でも、最も汚い「ひなぎく」を使うのだ。

大衆が望んでいること、大衆の反応、政治家の本質、ひいては人の本質と言えるところまで外挿できそうな表現があり好感が持てた。内容も理解可能。文章も分かりやすい。政治を見る目がこれで変わる。露出する際の心構えとしても大変役に立つ。読んでよかった。

評価:★★★★★

明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命/ドラッカー

  • p.33 マネジメントが基盤とすべきは、顧客にとっての価値であり、支出配分についての顧客の意思決定である。経営戦略は、ここから出発しなければならない。
  • p.90 行っていることや行っている方法の廃棄は、体系的な作業として行う必要がある。
  • p.92 しかしチェンジ・リーダーたるためには、機会に焦点を合わせなければならない。問題を餓死させ、機会を太らせなければならない
  • p.96 チェンジ・リーダーにとっての三つのタブー
    • 現実と平仄(ひょうそく)の合わないイノベーションを手がけること
    • 真のイノベーションと単なる新奇さを混同すること。イノベーションは価値を生む。
    • 行動と動作を混同すること
  • p.99 したがって、新しいもの、改善したものは、すべて小規模にテストする必要がある。
  • p.141 第四に必要とされる情報は、資金の配分と人材の配置についての情報である
  • p.143 そして、それらの人事の決定がもたらした結果を記録し、注意深く検討していかなければならない。
  • p.148 したがって、まず考えるべきことは、自分が何を必要とするかではない。人は自分に何を求めるかであり、それは誰かである。、、、問題に本当に答えられるのは、自分以外の者である。
  • p.148 仕事に必要な情報のかなりのものは、すでに述べたように、組織の外に求めなければならない。
  • p.152 全員が毎月一回、仕事の場での異常なことや予期せぬことを報告する。
  • p.157 これらはいずれも、個々の知識労働者が、自らがいかなる情報を必要とし、いかなる情報を人に提供する責任があるかを知らなければ不可能である。
  • p.170 まずもって、仕事の質を定義すべき事を意味する。
  • p.186 的確にパイロットを行ってさえいれば、知識労働者の生産性を大幅に向上させることができる。
  • p.187 しかし、この優位性を現実のものに出来るか否かは、先進国、およびその産業、企業が、この100年間における肉体労働の生産性向上に匹敵する速さで、知識労働の生産性を高めうるか否かにかかっている。
  • p.188 まさに、最高の知識労働者を惹きつけ、とどめる能力こそ、最も基礎的な生存の条件となる。
  • p.193 いよいよこの最終章では、働く人たち一人ひとりの問題について述べる。
    • 自分は何か。強みは何か。
    • 自分は所をえているか。
    • 果たすべき貢献は何か。
    • 他との関係において責任は何か。
    • 第二の人生は何か。
  • p.214 問題は何に貢献したいと思うかではない。何に貢献せよと言われたかでもない。何に貢献すべきかである。
  • p.217 貢献のためのプランを明確かつ具体的なものにするためには、長くともせいぜい一年半を対象期間とするのが妥当である。
  • p.217 背伸びをさせるものでなければならない。だが可能でなければならない。さらには、意味のあるもの、世の中を変えるものでなければならない。目に見えるものであって、できるだけ数字で表せるものであってほしい。

プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか/ドラッカー

プロフェッショナルの条件

本書において自分にとって大切だった文章の断片を列挙する。
この断片は記憶したかもしれない内容の検索キーワードとして書き留めたことに留意する。

  • p.29 専門知識の社会において、真に教育ある人間の要件は何かという問題である
  • p.54 「何が目的か。何を実現しようとしているか。なぜそれを行うか」。行う必要のない仕事をやめること
  • p.99 「いつも失敗してきた。だから、もう一度挑戦する必要があった」。完全を求めること。
  • p.103 毎年夏になると、二週間ほど自由な時間をつくり、それまでの一年を反省することにしている。
  • p.105 新しい任務が要求するものについて、徹底的に考え抜くこと
  • p.108 成長と自己変革を続けるために
    • ビジョンを持つこと、ファルスタッフ
    • 神々が見ている。真摯さを重視。誇りを持ち、完全を求めるということ。
    • 日常生活の中に継続学習を組み込んでいること
    • 自らの仕事ぶりの評価を、仕事そのものの中に組み込んでいる
    • 期待をあらかじめ記録し、後日実際の結果と比較している。目的は強みを知ること
    • 先生、上司から新しい仕事が要求するものについて教えられ、実行させられること
    • 全ての前提となる最も重要なこととして、自らの啓発と所属に自らが責任を持つということ
  • p.114 フィードバック分析
  • p.116 自らの学び方についての知識に基づいて行動すること。読む人と聞く人
  • p.118 自らの強み、仕事の仕方、価値観を知り、機会をつかむよう用意したものだけが手にできる。
  • p.126 時間の記録に出てくるすべての仕事について、「まったくしなかったならば、何が起こるか」を考えればよい。
  • p.143 勇気
    • 過去ではなく未来を選ぶこと
    • 問題ではなく機会に焦点を当てること
    • 横並びではなく自らの方向性を持つこと
    • 無難で容易なものではなく、変革をもたらすものに照準を合わせること
  • p.185 リーダーシップを仕事、責任とみること。信頼が得られること。言動の一致。
  • p.196 上司の強みに焦点を合わせる。何をではなく、いかなる順序で提示するかが大切である。
  • p.201 何らかの意味において、トップの座をねらうものでなければならない。 さもなければ競争相手に機会を与えるだけに終わる。
    • 懲りすぎてはならない。大勢いるのは普通の人たちである。
    • 多角化してはならない
    • 現在のためのイノベーションでなければならない。
  • p.222 ポスト資本主義社会においては、多くの人がこの二つの文化の中で生活し、仕事をする。知識人と管理者
  • p.231 フィードバックによって自分は何をうまくやれるか、いかなる能力や知識を必要としているか、いかなる悪癖をもっているかを知ることができる。
  • p.232 第一歩は、行うべき事を決めることである。しかる後に、優先すべきこと、集中すべき事を決めることである。そして、自分の強みを生かすことである。
  • p.234 成長のプロセスを維持していくために強力な手法を三つあげるならば、教えること、移ること、現場に出ることである。
  • p.234 「何によって憶えられたいか」
  • p.246 250万人もの経営管理者や専門家が、インターネットで履歴書を公開し、求人のオファーを求めている

特に今の自分に響いた文章:

  • p.80 成果をあげる人に共通しているのは、自らの能力や存在を成果に結びつけるうえで必要とされる習慣的な力である。
  • p.225 専門知識の所有者たる専門家自らが、自らの知識領域を理解しやすいものにする責任を果たさなければならない。