2003年時点での記憶なので今や少々古い情報かもしれないがまとめておく
遺伝子導入したHSCでの増幅はaNotch1, BCR/ABL, RBP-Jk, HoxB4があったように思う。
が、殆ど癌化遺伝子なのであまり興味は無いし臨床応用も先ず不可能。
そうなるとexogenous factorということになる。
少々脱線して何故こんなことを調べたかというと、ノックアウトマウスの表現形レスキューにretrovirusで遺伝子をHSCに導入しようと思い、5-FU法やその他簡単かと思ったがそうでもない。元細胞がコンディショナルノックアウトマウス由来だとするとB6マウスを10匹さばいて、、、のように大量にHSCを取ることも出来ない。
そんなときに調べたのがきっかけで結局次のペーパーとなった。要はaFGF-1でHSCを増幅してretrovirusで遺伝子導入してやろうというもの。
その頃、遺伝子導入ではなく外から振りかけてHSC増幅できるものはWnt3aとHoxB4があったが、purificationが難しい、実験の再現が取れないという話があった。実際にWnt3aはBCL2-Tgではなく通常のB6でのHSC増幅(なぜかSupplemental Data)は再現が取れないと本人が認めているといううわさもあり、某製薬会社でも再現取れなかったとの事。
Wnt3a:
A role for Wnt signalling in self-renewal of haematopoietic stem cells. Nature 2003;423(6938):409-14
ところがaFGF1ならInvitrogenでお安く簡単に入手できる。何よりDevelopmental Cellのデータがかなり凄いことになっていた。せいぜい数倍から数十倍というのが上記の名高いJournalに載った論文のデータだったが、それよりも遥かに良くExpandしているように見えた。
で、実験してみると驚くほどに良く増えた。一緒に実験した同僚は縁あってこの元論文の研究室への就職が決まってヨーロッパに戻った。ヒトのHSCでも試しているとのことで、うまく行きはしないかと期待している。
今日先輩に紹介してもらった論文ではzebrafishのFGFがヒト細胞に効果的らしい、もしかして使えないか?
Feeder-independent culture of human embryonic stem cells. Nat Methods 2006;3(8):637-646
そもそも数倍や数十倍ならば臨床の現場では有用とは言いがたいように思うが、数千、数万倍ということになると話は別である。色々妄想は膨らむ。どうなることやら、楽しみな分野の一つである。